生涯学習について

産業革命以降、大航海時代を起源とするグローバル化の進展が目覚ましいですが、この進展において例えば船、飛行機、鉄道、自動車などの移動手段の技術発展や、パソコン、インターネット、携帯電話などの情報管理の技術発展が生じてきました。こういった発展の中では、その時の課題を打破するために未知の現象に対しての挑戦がなされ、そこで取られた試行錯誤が記録され、情報として体系化され、効率性を求めて分析され、また新たな挑戦がなされてきました。

これまでグローバル化によって我々が競争してきている中で、我々は先進国へ安い労働力を提供してきました。そして雇用を奪われた先進国では、これを補うために更に新たなサービスや技術革新を産みだし、新たな雇用を創出してきました。この一方で、我々もまた後進国の安い労働力によって雇用を奪われてきました。このような体系が持続しており、人々の生活水準が維持向上していれば、過去にインターネット導入反対運動が起きたり、欧米で極右志向がこれほど高まったりすることは無かったのではないでしょうか。

これからは諸外国のみならず、人工知能やロボットによって既存の雇用が奪われると予測されています。このような状況下では、我々はどのような教育制度や学習環境を整えるべきでしょうか。日本のエリート集団として、これまで様々な予測をし、ビジョンを描き、“将来を言い当ててきた”経済産業省や総務省の高級官僚ですらも、これからの将来予測は出来ず、むしろ“言い当てられる”トップラナーを支援するといっています。海外文化、技術革新、イノベーターに加えて、多様化の要因に人工知能が追加されるからかもしれません。

グローバル化に臨む教育において、多様な価値観や文化間教育を理解するために「だまし絵」が使われてきました。例えばA国の価値観や文化によって体系づけられた捉え方では、老婆の目、鼻、口に分類していきますが、一方でB国の価値観や文化体系による捉え方では、若い女性の耳、顎、ネックレスに分類されるということです。ビッグデータという新たな資源によって生まれる人工知能という技術革新も、このような新たな捉え方で、我々の既存の価値観、文化、言語体系などに挑戦し、再定義を促していくことでしょう。

このような前提に立つと、人間の叡智を超えた予測できない変化の激しい社会が来ることを見越して、老若男女問わず我々が生き残る術を身に付けられる環境を整備する事は必要な政策でしょう。私はこれを見越した教育制度を整える事が重要と考えます。身に付けるべきこととして、激変化する社会で発生するプロセスに照準を当てると大多数の人々の役に立つ考えられ、例えばオイルショックを予測して激変下でも生き残ったロイヤルダッジシェルのシナリオプラニングを義務教育科目に取り入れるべきだと考えます。

このシナリオプラニングでは、イ)将来の可能性を思い描き空想する能力、ロ)可能性の効果を試算する能力、ハ)可能性を分類する能力、ニ)分類された可能性の確率を導く能力、ホ)導いた可能性を実践する能力が必要です。グローバル化、技術革新、人工知能化によって、再定義された事象に対して、どのように捉えているか、なぜそう捉えたか、どれくらいの確率で起こるかといった認識を我々が出来るのであれば、起きてしまった環境変化にも順応しやすくなるためです。

イ)~ハ)に関し、既存の具体的な科目を例として挙げるとすれば次の通りです。イ)については、歴史、小説、科学、美術など、ロ)については、数学、経済学、工学など、ハ)については、言語学、法学、ネットワーク学など、ニ)統計学、経営学などに分類できます。この中で社会の一員としての専門性を身に付け、暗記再現型ではなく創造実践型へ転じていくことで、人工知能やロボットに仕事を奪われたとしても、我々は新社会に再順応していくことが出来ることでしょう。