農業政策を考える上で(1)

専業農家の方々の平均年齢は平成27年度2月時点で67歳[1]です。このうち、65歳以上の方々が65%であれば、仮に64歳の方々が残り全ての割合を占めていたとしても、全体での平均値67歳となるためには65%の大部分を占める方々の平均年齢は68.6歳となります。農業人口が192万人の内、専業農家は159万人いるので、103万人の方々が65歳以上で、先の仮定に基づく103万人の方々の平均年齢は68.6歳となります。

新規就農者の49歳未満の方が2.3万人、うち2万人が44歳以下であることから、仮に、これらの2.3万人の方々に農業人口と主要農業従事者の比率が当てはまるとすれば、1.9万人が49歳以下、うち1.7万人が44歳以下となります。先の仮定のように、1.7万人全てが44歳、残りの0.2万人が49歳であるとすれば、65%を占める先の方々の平均年齢は69歳となります。これらの推計は事実に基づく最も厳しい推計値ですので、実際のところ先の65%の専業農家の方々の平均年齢は恐らく70歳以上でしょう。

日本人の平均寿命は男性が80.5歳で女性が86.8歳[2]であることから、65%の専業農家は現在の平均寿命まであと10年程度であると言えます。平成25年12月に日本食文化がユネスコ無形文化遺産に登録されましたが、伝統的な日本食で使われる各地域の土地なりの食材を昔ながらの方法で栽培する場合、土を作るのに10年掛かると言われています。このままでいくと、無形文化遺産に登録された日本の食文化も残り10年足らずで国内外問わず非常に珍しいものとなるかもしれません。

昔ながらの日本の食文化を後世に継承していくためには、我々は何をすべきでしょうか。安く調達される海外産の食材で調理される料理を、国内産の食材に全て切り替える運動を各々が起こせば解決するのでしょうか。しかし家計所得の都合上、我々は本当に国内産の食材のみに全て切り替えられるでしょうか。農家の方々は、仲介業者の要望に応え、規格に応じた良い食材のみを作り、お歳暮用として栽培している高品質の農産物の例も見られます。

旬の食材を期間限定でお歳暮用に栽培するのであれば単価を高くして一定期間だけ販売すれば売れるかもしれませんが、飲食店などの加工業者が今年の農作物の出来栄えを踏まえて新メニューを考案するための2週間の創作期間とメニュー掲載期間の数か月には応えることが出来ません。また、加工業者が一般消費者に料理として出す原価率は30%程度ですので、例えば1つ300円で卸取引される食材が飲食店に並ぶ時には1,000円となります。500円であれば1,670円、2,000円であれば6,670円となります。

TPPによって、これから安い食材が日本に流通していくのであれば、先の専業農家の方々は価格競争に更に晒されるでしょう。他国と比べて割高の農業資材や農薬の価格を抑えるのは必要でしょうが、これだけでは農家の方々は10年も耐えられないかもしれません。世界全体では人口が増加し、これから目覚ましく経済成長を遂げていく国々での食糧需要は伸び、温室効果ガスの増加による気候変動が、農作物の収穫量を不安定とする中で、経済力を蓄えていった国々での食料需要は更に上がるでしょう。この世界での食料需要が10年後に起こるとすれば、今後日本でも食糧難が起こるかもしれません。
[1] http://www.maff.go.jp/j/tokei/sihyo/
[2] http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG30H8W_Q5A730C1EA1000/
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